親不知は上下左右の一番奥に1本ずつ存在します。(親不知が先天的にない人もいます。)
これらは多くの場合、はえるための十分なスペースがないために、斜めに傾いてはえたり、骨や歯肉の中に埋まったまま出てきません。その結果、第二大臼歯と歯肉の隙間から細菌が進入し、炎症を起こして、ある日突然激痛や腫れを引き起きします。(残念ながら、当院に駆け込んで来られる日本人患者さんによく見られる症例です。)
このような症状が早期に表れず、虫歯や歯周病が親不知のみならず第二大臼歯にまで及びます。そして時として治療可能な限界を超えていることもあります。つまり親不知を残しておいたために、親不知と第二大臼歯の2本を失うことになるのです。
例え親不知が他の歯同様完全にはえ出たとしても、口腔内奥過ぎて、歯ブラシが届きにくいものです。そのため上記同様の結果が待っています。
第二大臼歯は噛み砕くという機能を担うだけになく、その有無は将来他の歯を失った時に治療の選択肢の幅を左右するとても重要な歯です。またこの歯を失うことで、噛み合せの歯が動き、新たな口腔内の問題を引き起こすこともあります。
これは、親不知が傾き部分的にはえている状態です。親不知の左隣の歯(第二大臼歯)に注目して下さい。虫歯が歯肉下まで進行し、歯を支える周囲の骨も溶かされています。この歯を救うためには神経治療、クラウン、歯周病治療、親不知の抜歯など多くの治療が必要で、心身・時間・経済的な負担が重く圧し掛かります。そしてその予後は決して明るくありません。数年しか持たず、結局抜歯という可能性も十分考えられます。それならば長期的な成功を求めて、第二大臼歯の抜歯後インプラントという選択の方が賢明かもしれません。いずれにせよ、親不知さえ早く抜いていれば、この第二大臼歯の健康は末永く続いたことを思うと残念でなりません。